定款変更とは?基本知識を解説

定款変更の定義とその重要性

 定款変更とは、会社の基本的な運営ルールを定めた定款を修正または更新することを指します。定款は会社設立時に作成する文書で、会社法に基づいて会社の商号や目的、本店所在地、組織体制などを明文化したものです。この文書は会社運営の土台となるため、重要な事項を変更する場合、定款の修正が求められます。例えば、本店所在地を移転する、事業目的を変更するなどの際には、定款の記載内容を変更しなければなりません。正しく手続きを行わないと、会社運営や取引上の信頼性に影響を与えるため、定款変更は非常に重要です。

定款変更が必要になる主なケース

 定款変更が必要となるのは、会社運営における基本方針や重要な情報に変化が生じた場合です。具体的な例としては、以下のようなケースが挙げられます:

  • 本店所在地の移転: 市区町村が変わる場合などには、必ず定款の修正とともに変更登記が必要です。
  • 事業目的の変更: 新たな事業を追加する、または事業内容を変更する際に必要になります。
  • 商号の変更: 会社名を変更する場合には、定款の修正と共に手続きを行います。
  • 役員構成や任期の変更: 役員人数や任期に関する条項の改訂も定款変更が必要です。

 これらのケースでは、法務局への変更登記や必要書類の作成が求められるため、適切な手続きを怠らないよう注意しましょう。

絶対的記載事項と相対的記載事項とは?

 定款には記載が義務付けられている事項や、記載することで初めて効力を持つ事項があります。これらの事項は以下のように分類されます:

  • 絶対的記載事項: 記載しないと定款自体が無効となる事項です。これには、会社の商号、本店所在地、事業目的、発起人の氏名、発行可能株式総数などが含まれます。
  • 相対的記載事項: 記載しないと効力が認められない事項です。例えば、株式譲渡制限に関する定めや役員報酬についての定めが該当します。
  • 任意的記載事項: 記載しなくても定款の有効性には影響しませんが、記載することで運営の指針を明確化できます。例として、取締役会や議事録の取り扱いに関する条項があります。

 特に、定款変更は絶対的記載事項を修正するときに重要性が増します。これらを正確に理解しておくことが会社運営上のリスク回避に役立ちます。

定款変更が必要な登記事項の代表例

 定款の変更内容によっては、法務局での変更登記が必要です。変更登記が必要となる代表的な例として、以下が挙げられます:

  • 本店所在地を異なる市区町村に移転する場合
  • 事業目的の拡大や変更を行う場合
  • 商号(会社名)を変更する場合
  • 会社の組織形態(例えば合同会社から株式会社への変更など)を変更する場合

 これらの内容を変更した場合、定款変更だけでなく、変更登記を行わないと法的効力が発生しないため必ず手続きを行う必要があります。また、登記申請は変更後から2週間以内に行うことが会社法で定められています。

定款変更の手続きを怠った場合のリスク

 定款変更を正しく行わなかった場合には、以下のようなリスクが生じます:

  • 法的効力の欠如:変更登記が必要な場合に手続きを怠ると、法的に変更が認められないため、会社運営に支障をきたす可能性があります。
  • 罰則やペナルティ:登記を怠ると、代表取締役などに対して過料が科される場合があります。
  • 取引先や公的機関からの信頼の喪失:定款が現実の会社運営状況と乖離している場合、取引先に疑念を抱かれるほか、税務署への届出にも支障が出る可能性があります。

 これらのリスクを防ぐためには、会社法や法務局での手続きに精通した上で変更事務を適切に進めることが重要です。

定款変更の具体的な手続きの流れ

株主総会の特別決議の準備

 定款変更を進めるためには、まず株主総会において特別決議を行う必要があります。特別決議とは、通常の決議よりも厳格な条件を満たすことが求められる決議方式です。株式会社の場合、会社法に基づき、議決権を持つ株主の3分の2以上の賛成が必要とされています。これには議決に参加する株主総数が法定数を満たしていることが条件です。

 事前に株主に対して通知を行い、改訂案の詳細説明や議案の適切な準備をしておくことが重要です。株主全員が議案や変更点について明確に理解できるよう、事業目的変更や役員構成の変更などの具体例を挙げて説明することを心がけましょう。

株主総会議事録の作成方法とポイント

 株主総会で特別決議が成立した場合、その結果を正式に記録するために株主総会議事録を作成します。この議事録は定款変更手続きの重要な書類であり、法務局への変更登記申請にも必要となります。

 議事録には、会議の日時や開催場所、出席株主の数、議案内容、決議結果、議長の名前などを正確に記載することが求められます。また、出席した株主全員に内容を確認してもらい、署名または記名捺印をしてもらうことがポイントです。記載ミスや不足があった場合、法務局による登記がスムーズに進まない可能性があるため、丁寧に作成することが重要です。

株主総会後に行う変更登記の流れ

 株主総会の議決後、変更内容が登記事項に該当する場合には、変更登記を行う必要があります。会社法では、登記は事由発生から2週間以内に行わなければならないと規定されています。このため早急な対応が求められます。

 変更登記には、株主総会議事録のほか、変更後の定款や登記申請書が必要です。具体的には、法務局に「変更登記申請書」を提出し、必要書類を添えて申請します。場合によっては、登録免許税の納付も必要となるため、事前に手続き費用を確認しておくことをおすすめします。

税務署への届け出とその注意点

 定款変更内容が税務署への届け出を必要とする場合もあります。例えば、本店所在地の移転や商号変更、事業目的の変更などが該当します。これらの変更は、税務署に対して所定の届け出を行う必要があり、「異動届出書」などの書類を作成して管轄税務署に提出します。

 注意点として、税務署への届け出を怠ると、税務手続きや税金に関する問題を招く可能性があります。また、税務署以外にも、場合によっては都道府県税事務所や市区町村役場にも届け出が必要な場合があるため、手続きを確認のうえ確実に進めましょう。

その他必要な書類と申請ステップ

 定款変更に伴う手続きでは、他にもさまざまな書類の準備が必要になります。主な必要書類としては、株主総会議事録、変更後の定款、変更登記申請書、登録免許税の収入印紙などが挙げられます。さらに、変更内容に応じて印鑑証明書や登記されている役員の住所変更届が必要となるケースもあります。

 申請の際は、法務局にて必要書類を揃え、誤りがないかを入念に確認してから提出します。申請が受理されると、変更内容が正式に登記簿へ反映されます。申請ステップを的確に進めるために、法務局や専門家に確認を取りながら進めると安心です。

定款変更にかかる費用と期間

定款変更にかかる主な費用

 定款変更にかかる費用は、主に手続きに伴う登録免許税や書類作成費用などが挙げられます。たとえば、定款変更後に登記が必要な場合、法務局に支払う登録免許税が発生します。また、自分で手続きを行う場合はこの費用のみで済みますが、司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合は、その報酬費用も加算されます。さらに、変更内容によっては追加の書類作成や準備が必要となり、これによりコストが増加する可能性もあります。

登記申請に必要な登録免許税とは?

 登録免許税とは、法務局に登記申請を行う際に課される税金です。定款変更を伴う登記申請の場合、基本的には登録免許税が3万円かかることが一般的です。ただし、特定の条件や会社形態によっては、金額が異なる場合もあります。この登録免許税は、定款変更手続きの中でも重要なコスト要素の一つですので、事前に必要な金額を把握しておくことが大切です。

ケース別のコストシミュレーション

 定款変更にかかる費用は、変更内容や依頼するかどうかによって異なります。たとえば、本店所在地を移転する場合、登録免許税以外に、引越しなどの実費が発生する場合もあります。一方で、専門家に依頼した場合、報酬費用として5万円から10万円程度が相場となります。逆に、事業目的の追加や、役員の変更など簡易的な変更手続きを自分で行う場合は、登録免許税分の費用のみで済むため負担を軽減できます。このように、変更内容や個別のケースに応じた費用シミュレーションが重要です。

手続き完了までにかかるおおよその期間

 定款変更手続きにかかる期間は、変更内容の複雑さや準備の進捗状況によって異なります。一般的には、株主総会での特別決議から法務局への変更登記申請までを含めて、約1~2週間程度が目安です。ただし、登記申請後も法務局での審査が必要となるため、手続き全体が完全に完了するまでにはさらに数日から1週間程度かかる場合があります。早期に手続きを進めるためには、必要書類や手順を事前にしっかりと把握しておくことが重要です。

費用を抑えるための工夫と注意点

 定款変更にかかる費用を抑えるためには、自分で手続きを進める方法が有効です。例えば、法務局が提供する無料フォーマットを活用して変更登記書類を自作することで、専門家への依頼費用を削減できます。また、電子申請を利用すると印紙代を軽減できる場合があるため、費用対策としておすすめです。ただし、専門知識が不足していると書類不備や手続きの遅延に繋がる可能性もあるため、難しいと感じた場合には早めに司法書士や行政書士に相談するとよいでしょう。作業効率とコストをバランスよく考慮することがポイントです。

定款変更を自分で行うか、専門家に依頼すべきか

自分で行う場合のメリットと注意点

 定款変更を自分で行う最大のメリットは、コストを抑えることができる点です。法務局への提出に必要な登録免許税や郵送費以外に、専門家への依頼料が不要となるため、費用を最小限に抑えたい方には適しています。また、自分で手続きに携わることで、定款の内容や変更登記について深い理解を得ることができるのも利点です。

 一方で、注意すべき点も多くあります。例えば、「定款を変更した場合、届出は必要ですか」という疑問に直面したとき、内容によっては変更登記が必須となるため、適切な手続きを理解していないと法律に違反する可能性があります。また、株主総会の特別決議や議事録作成などの手続きには、会社法の規定に従った詳細な準備が求められるため、時間と労力がかかることを覚悟しなければなりません。さらに、提出書類に不備がある場合には法務局での手続きが滞る可能性もあるため、慎重に進める必要があります。

専門家に依頼する場合のメリットとコスト

 定款変更を専門家に依頼する場合の大きなメリットは、手続きのスムーズさと正確性です。司法書士や行政書士は、「定款変更のやり方と登記の要否」について熟知しており、書類作成や法務局への申請までを迅速に代行してくれます。そのため、自分で手続きするよりも余計な時間や手間を省けるだけでなく、法務局への書類不備などによるトラブルを防ぐことができます。

 ただし、専門家への依頼には費用がかかるため、コストを考慮する必要があります。具体的には、司法書士や行政書士の報酬として数万円程度が相場となることが多く、これに加えて登録免許税やその他の実費が発生します。しかし、会社の重要な部分である定款に関わる手続きの正確性を保証するためには、この費用を“必要な投資”と考えることも十分検討に値します。

司法書士や行政書士に依頼する際の選び方

 司法書士や行政書士を選ぶ際は、まず実績や専門性を重視することが大切です。定款変更や変更登記に関する豊富な経験を持つ専門家であれば、会社法に基づく最新の手続きにも対応してくれるため、安心して任せられます。また、料金体系が明確であるかどうかも確認しましょう。不明瞭な費用が後から発生しないよう、事前に総額を把握できる専門家を選ぶとよいでしょう。

 さらに、相談しやすさも選定の大きなポイントです。特に「定款を変更した場合、届出は必要ですか」といった初歩的な質問にも親身に応じてくれる専門家であれば、相談がスムーズに進むだけでなく、納得のいく手続きが可能となります。業務内容や依頼条件を比較検討しながら、自社のニーズに最適な専門家を選びましょう。

依頼すべきか判断するためのポイント

 定款変更を自分で行うか専門家に依頼するかを判断する際は、自社の状況や手続きに割ける時間・労力を考慮することが重要です。例えば、会社の運営を始めたばかりで内部リソースが限られている場合は、専門家に手続きを依頼するのが効率的です。一方で、手続きの経験があり比較的シンプルな変更内容である場合には、コストを抑えるために自分で行う選択肢も適しています。

 また、変更内容が登記事項に該当するかどうかも重要な判断材料です。法務局への変更登記が不要な場合には、自分で書類を整備するだけで済むケースもあり、専門家に依頼しなくても問題ありません。しかし、登記が必要な場合や手続きの流れが複雑な場合には、専門家によるサポートを活用することで、法律違反や手続きの遅延を防ぐことができます。

手続きでよくあるトラブルとその解決策

 定款変更の手続きでは、よくあるトラブルとして「必要書類の不備」や「法務局への申請期限の超過」が挙げられます。また、株主総会議事録の作成が法的要件を満たしていなかった場合や、記載ミスがあった場合も手続きがスムーズに進まなくなる可能性があります。

 これらのトラブルを防ぐためには、事前の準備と確認が重要です。株主総会での決議内容を正確に記録し、会社法の要件に基づいて議事録を作成することが必要です。また、法務局のウェブサイトや確認窓口を活用し、「変更登記」に必要な書類を把握しておくことも有効です。

 仮にトラブルが発生した場合は、早急に専門家に相談することで適切な対応を図ることができます。特に「手続き上のミスにどう対処すべきか」が不明な場合には、司法書士や行政書士のサポートを利用すると、問題解決がスピーディーに進むでしょう。

投稿者プロフィール

武石大介
武石大介
2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。

現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。