会社の事業目的変更とは?
事業目的変更の概要
会社の「事業目的変更」とは、設立時に定款や登記簿に記載された事業内容を変更、追加、または削除することを指します。会社が新たな事業を始める際や、新規市場への進出を目指す場合、または事業内容を見直す際に行われる手続きです。この変更は法的な手続きを伴い、「変更登記」が必要となります。そのため、適切な方法で定款を修正し、法務局での登記申請を行う必要があります。
事業目的変更が必要になるケース
事業目的変更が必要になる具体的なケースには、新しい事業分野に進出する場合や既存の事業を縮小・廃止する場合があります。例えば、IT分野での事業を拡大する際には「アプリケーションの開発」や「ITコンサルティング」などの新しい事業項目を目的に加える必要があります。また、既存の事業内容が時代の変化に合わなくなった場合や、事業再編やM&Aを実施した場合も、定款に変更を加えることが重要です。変更が適時に行われないと、取引先や金融機関との信頼に影響を及ぼす可能性があります。
定款における事業目的の意味
「定款における事業目的」とは、会社が法的に行うことができる事業内容の範囲を定めた項目のことです。これは「会社の憲法」ともいえる定款に含まれる重要な情報の一部で、法人の活動内容を定義する役割を果たします。この記載があることで、会社ができること・できないことが明確になります。また、金融機関での信用確保や新規取引先への説明時にも、記載内容が重要な判断基準となります。定款に記載されていない事業を行ってしまうと、契約が無効になるリスクもあるため、事業目的を明確に記載しておくことが求められます。
目的変更のメリットと注意点
会社の事業目的変更にはいくつかのメリットがあります。第一に、新規事業の開始や既存事業の拡大に対応できる点です。さらに、事業目的を明確にすることで、取引先や投資家からの信用を得やすくなります。また、事業内容が変化してもその都度適切な変更を行うことで、法令遵守の姿勢を示すことにもつながります。
一方で、注意点としては、「会社目的の変更に必要な手続きと書き方」を正確に理解しなければならない点が挙げられます。具体的には、変更には株主総会の特別決議を経て定款を修正し、法務局での変更登記を行う必要があります。また、変更登記は通常、変更後2週間以内に完了させなければならないため、スケジュール管理も重要です。さらには、目的変更後に必要な届出先への対応も抜かりなく行う必要があります。
事業目的変更の具体的な手続きの流れ
会社の事業目的を変更する際には、いくつかの重要なステップが必要です。この手続きは法律に基づき、厳密に進める必要があります。以下では、会社目的の変更に必要な手続きとその全体的な流れについて詳しく解説します。
手続きの全体的な流れ
事業目的を変更するには、まず事前に必要な準備を進め、必要書類を整えることが重要です。その後、以下のような手順で進めます。
1. 株主総会の開催: 株主総会を開催し、目的変更についての特別決議を行います。
2. 株主総会議事録の作成: 特別決議の内容を議事録として文書化します。
3. 定款の変更: 決議された新しい事業目的を反映した定款を準備します。
4. 登記申請書の作成: 目的変更登記申請書に必要な情報を記載します。
5. 法務局への申請: 必要書類を法務局に提出し、変更登記を完了させます。
これら一連の手続きには、定款の変更に加え、法務局での登記や必要書類の提出、届出先への報告が含まれます。これらを迅速かつ正確に行うことが、事業目的変更の成功に繋がります。
株主総会の特別決議が必要な理由
事業目的を変更する際には、株主総会での特別決議が必須とされています。これは、事業目的が会社の運営や事業方針に深く関わる重要な事項であるためです。株主にとって、会社の目的変更は投資判断に影響を与える可能性があります。そのため、株主総会で3分の2以上の賛成を得る特別決議が求められるのです。
また、定款は「会社の憲法」ともいえる基本的な規則を定めた文書です。その変更には、会社全体の承認を得る必要があり、特別決議を通じて透明性を確保します。したがって、このプロセスは会社法によって義務付けられています。
法務局での登記手続きの概要
株主総会での特別決議を経た後は、法務局に対して変更登記を申請します。この登記を行わないまま事業を始めてしまうと、対外的な信用を損ねるリスクがありますので注意が必要です。
変更手続きにおいて、以下の書類が法務局への提出に必要となります:
1. 目的変更登記申請書
2. 株主総会議事録
3. 株主リスト
4. 定款またはその変更箇所の書面
5. 登録免許税の納付書
特に、株主総会議事録や株主リストは、誤記や不足がないよう丁寧に作成することが重要です。正確な内容で登記申請書を作成し、申請期限内(通常2週間以内)に手続きを完了させましょう。
電子申請を利用する場合の手順
近年では、電子申請による手続きが一般的になりつつあります。これは、従来の紙ベースの申請手続きに比べ、利便性や迅速性が向上するためです。
電子申請を利用する場合の主な手順は以下の通りです。
1. 登記・供託オンラインシステムへの登録: 事前に法務局のオンラインシステムに登録し、電子署名を取得します。
2. 必要書類の電子化: 目的変更登記申請書や株主総会議事録など、全ての必要書類を電子データに変換します。
3. 電子署名の付与: 提出する書類に電子署名を付与し、申請者の正当性を証明します。
4. オンラインでの申請: 登記・供託オンラインシステムに提出書類をアップロードし、申請を完了させます。
5. 手続き完了の確認: 法務局から発行される完了通知を確認し、手続きが終了したことを確認します。
電子申請を活用することでスムーズな申請が可能になり、時間と労力の削減が期待できます。ただし、初めて電子申請を行う場合は、システムの利用方法についての事前確認が必要です。
事業目的変更に必要な書類と申請書の書き方
必要となる主な書類一覧
会社の目的変更を行う際には、以下の書類が主に必要となります。
- 目的変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 定款の変更後の写し(必要に応じて)
- この中でも特に重要なのは、株主総会議事録と目的変更登記申請書です。正確に作成し、法務局に提出することで変更手続きが完了します。また、これらの書類に漏れや不備がある場合は申請が受理されないことがあるため、注意が必要です。株主総会議事録の作成ポイント 株主総会議事録は、定款の変更を正式に決議したことを証明する重要な書類です。議事録には以下の内容を明確に記載する必要があります。
- 株主総会の開催日時と場所出席株主及び持株数(議決権の過半数を越える必要があります)議事内容および決議事項事業目的変更の具体的な内容議長および署名権者の署名・押印
- 全ての株主の氏名・住所・持株数を記載する議決権の割合が正確に計算されていることを確認株主総会に出席していない株主も含める
- 会社名および本店所在地変更前および変更後の事業目的変更決議の年月日(株主総会開催日)登記申請日および申請者の署名押印
- 事業目的変更時の費用と手続き後の対応事項手続きにかかる費用の内訳 会社の事業目的を変更する際には、一定の費用がかかります。まず、登記の申請手数料として登録免許税が必要で、これは3万円が一般的な金額です。ただし、資本金の額や変更内容によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
- また、司法書士や専門家に依頼する場合は、その報酬費用も別途発生します。電子申請を自身で行うことで、専門家への依頼費用を削減することが可能です。事業目的変更後に必要な届出先 事業目的を変更した後は、法務局での変更登記が完了した後に、関係各所への届出も必要です。代表的な届出先としては、税務署、市区町村役場、社会保険事務所、労働基準監督署などが挙げられます。
- また、資本金や事業内容に関する情報を共有している取引先にも、変更事項を連絡することが信頼維持のために重要です。これらの届出や通知は、登記が終わってから速やかに行うようにしてください。税務署などでの手続き 税務署では、事業目的変更に関する「異動届」の提出が求められます。この手続きの際には、法務局で取得した新しい登記簿謄本が必要書類となりますので、準備を忘れずに行いましょう。
- さらに、特定の事業を追加した場合には、該当する業種の許認可申請や税関連の登録手続きも必要になる場合があります。また、社会保険や労災保険に加入している場合、加入している保険機関にも変更内容を連絡する必要があります。変更後の事業目的運用におけるポイント 事業目的変更後の運用においては、運営する事業が定款に記載された内容と一致しているかを定期的に確認することが重要です。
- 万が一、定款に記載されていない事業を行った場合、取引先や金融機関との信頼を損なうリスクがあるため注意が必要です。また、変更した事業目的に関連する許認可が必要かどうかを事前に確認し、必要であれば速やかに取得してください。さらに、事業目的の変更により制定した新規ルールや施策が従業員全体に周知されているかどうかもチェックして、スムーズな運営ができるよう努めましょう。
投稿者プロフィール

- 2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。
現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。
最新の投稿
会計等記事2025年4月26日起業家のプライバシーを守る!登記簿住所非公開制度のメリットと注意点
会計等記事2025年4月25日会社登記でミスが発覚!そのとき取るべき対処法とは?
会計等記事2025年4月25日清算手続きと事業譲渡の違いを徹底解説!あなたの会社に合った方法は?
会計等記事2025年4月25日会社解散時に知っておきたい!清算人の重要な役割と注意点