補助金申請書を書く前に押さえるべき基礎知識

補助金の目的と趣旨を理解する

 補助金は、国や地方自治体が特定の社会的課題を解決したり、新しい産業の育成を支援したりするために設けられています。そのため、補助金申請書を書く際には、自社の事業や取り組みが補助金の趣旨にどのように合致するのかを明確に示す必要があります。例えば、環境保護への貢献が目的の補助金であれば、自社が行う事業がいかに環境に配慮したものかを具体的に説明しましょう。趣旨をしっかりと理解することで、審査員にとって説得力のある内容を構築することが可能です。

審査員が重視するポイントを知る

 補助金の審査では、採択条件に基づいた事業の実現可能性や、社会への貢献度などが重視されます。特に、事業計画の具体性や、事業を通じた地域経済や社会への影響が明確に記載されているかが重要です。また、経費の妥当性や、計画の一貫性も審査の大きなポイントです。補助金申請書の書き方としては、「この企業なら実現できる」と思わせる根拠を丁寧に説明することが求められます。

業界のプロではない審査員を意識するコツ

 審査員は対象分野の専門家とは限りません。そのため、業界の専門用語や事情を説明なしに盛り込むと、内容が理解されない可能性があります。補助金申請書の書き方のコツとして、自社の取り組みを詳しくない人にもわかりやすく伝えることを心がけましょう。具体例を加えたり、難しい用語を平易な言葉に言い換えたりすることで、どのような立場の審査員に対しても説得力を高めることができます。

補助金の対象となる経費と条件を確認する

 補助金の申請には、対象となる経費や条件が細かく設定されています。例えば、設備費や人件費が対象となる場合もあれば、事務所の改装費用など一部が除外されることもあります。審査に通る補助金申請書の書き方としては、これらの条件に合致する経費を正確に計上することが大切です。また、必要な書類や提出期限を確認し、漏れがないよう注意しましょう。公募要項をしっかり確認し、それに基づいた申請書の作成が採択率向上の鍵となります。

効果的なストーリー設計で説得力を高める

事業の目的と自社の強みを具体的に示す

 補助金申請書の書き方において最も重要なポイントの一つが、事業の目的と自社の強みを具体的に示すことです。審査員は申請書を通じて「この事業がなぜ必要で、どのような価値を提供するのか」を読み取ります。そのため、自社の強みを事業目的と関連付け、明確に伝える必要があります。例えば、過去の実績や独自の技術、または担当する人材の専門性など、他社と差別化できる部分を具体的に盛り込むことで、説得力が高まります。

 もし自社の業界をまたいだ新しい挑戦である場合は、異業種参入の理由や事業とこれまでの関連性を示すことも大切です。たとえば、車の部品を製造する企業が新たに食品事業を開始する場合、その背景や強み(例:技術力による高い品質管理が食品に活用される点)をストーリーとしてしっかり説明することが採択へのカギとなります。

問題点を定義し、それに対する解決策を提示する

 審査員に事業の必要性を納得させるためには、まず現状の問題点を正確に定義することが重要です。補助金申請書では、現状の課題や市場のニーズを明確にし、それに対する具体的な解決策を提示することが求められます。たとえば、「地域に〇〇なサービスが不足している」「市場全体の××が課題となっている」といった形で、ターゲット市場や業界の状況についての背景をデータや調査結果とともに記載します。

 その上で、申請する事業がどのようにその問題を解決するのか、具体的な施策や行動計画を示します。このとき、事業内容が持つ実現可能性や具体性を意識することが大切です。単なる理想論ではなく、現実的で説得力のある解決策を記載することで採択率が向上します。

具体例で事業内容をわかりやすく伝える

 補助金申請書の書き方では、読み手である審査員に事業内容を正確に伝えることが不可欠です。そのためには、具体例を活用した説明が効果的です。たとえば、自社で提供予定の商品やサービスの詳細な仕様や利用シーン、予想される成果などを具体的に記載します。

 また、既に事業の一部が実施されている場合は、その成果や利用者からのフィードバックを紹介するのも効果的です。「初期導入段階で〇〇人の利用者が満足した結果、継続利用者が××%増加した」というように数値や具体的な事例を用いることで、審査員に明確なイメージを伝えることができます。

数値データで説得力を加える

 数値データの活用は、補助金申請書において非常に重要な要素です。事業の現状分析や今後の計画に数値を反映させることで、審査員はその信頼性が高いと判断できます。たとえば、「ターゲット市場の需要が直近3年間で〇〇%増加し、今後も△△%の成長が見込まれる」といった記載をすることで、事業の必要性を強く裏付けることができます。

 このとき、単にデータを羅列するだけでは不十分です。データを基に自社がなぜその市場で成功できるのか、どのように課題を解決し価値を提供できるのかについて具体的に示すことが重要です。信頼性の高い情報源を活用し、データの正確さを担保することも忘れてはいけません。

採択率を上げる書き方のポイント

端的で簡潔な文章を心がける

 補助金申請書の書き方においては、端的で簡潔な文章を心がけることが重要です。審査員は限られた時間の中で多くの申請書を確認するため、要点がすぐに伝わる内容が求められます。具体的には、一文を短くし、主語と述語が明確になるよう配慮することがポイントです。例えば、「弊社は〇〇製品を通じて市場の課題を解決します」のようにシンプルで明瞭に要旨を伝えましょう。また、不要な修飾語や繰り返しの表現を避けることで、より洗練された文章が仕上がります。

専門用語を避け、誰にでも理解できる表現を使う

 補助金申請書は審査員全員が業界の専門家とは限らないため、誰にでも理解できる表現を使用することが採択の鍵となります。専門用語や業界独自の略語を用いる場合は、その意味を簡潔に説明する配慮を忘れないでください。例えば、特定の技術や手法に触れる際も、「〇〇とは、△△を実現する方法です」といった補足を加えることで、内容を分かりやすく伝えることができます。このような工夫は、文章全体の可読性を高め、審査員への伝わりやすさを向上させます。

審査基準と公募要項に沿った内容を盛り込む

 採択率を高めるためには、審査基準や公募要項を熟読し、それに沿った内容を記載することが必須です。補助金や助成金ごとに評価基準が異なるため、事業の目的や強みがこれらにどのように適合しているかを具体的に示しましょう。例えば、審査基準に「地域社会への貢献」が含まれている場合、自社の事業がどのように地域経済や雇用を支えるかを、データや実例を交えて説明することが効果的です。また、公募要項に記された書式や記載項目を正確に守ることも忘れてはなりません。

求められる必要書類を確実に準備する

 補助金申請書の書き方がどれだけ優れていても、必要書類が不足していたり、不備があれば審査の対象から外される可能性があります。そのため、事前に公募要項を細かく確認し、必要書類を確実に揃えることが大切です。特に、中小企業がよく求められる経営計画書や事業計画書については、具体的な数値やデータを含め、事業の実現可能性をしっかりと示すことが重要です。また、提出前に第三者の目を通すことで、記入漏れや誤字脱字の確認を行うことをお勧めします。こうした徹底した準備が採択率向上の裏付けとなります。

成功事例や失敗例から学ぶ補助金申請

採択された申請書の特徴を分析

 採択される補助金申請書にはいくつか共通した特徴があります。まず、事業の目的が明確で、補助金を活用する理由がしっかりと示されています。その上で、申請者自身の強みや事業の優位性が具体的に記述され、他の申請者との差別化が図られています。また、ターゲット市場のニーズに応じた具体的な戦略や効果を伝えることもポイントです。さらに、経費の計上が正確かつ合理的であることも重要な要素です。補助金申請書の書き方を学ぶ際には、これらの採択例を参考にすることで、事業のストーリーに説得力を持たせることができます。

よくある失敗事例とその回避方法

 補助金申請が不採択となる理由の多くは、内容が不明確であったり、審査員にとって意図が伝わりにくい書き方をしてしまうことにあります。例えば、専門用語を多用しすぎたり、事業の具体性が欠けていると、不採択の可能性が高まります。また、公募要項に記載された要件を満たしていない場合もよくある失敗の一つです。このような失敗を防ぐためには、まず公募要項をしっかりと読み込み、それに沿った申請書を作成することが重要です。さらに、専門的な視点で補助金申請書の書き方を確認してもらうために、外部の専門家に依頼するのも有効な手段です。

経験者の声から見る成功の秘訣

 補助金申請経験者の中には、採択率を上げるための工夫を取り入れた方が多くいます。その中でも特に効果的とされるのが、申請書のストーリー設計です。事業の背景や目的、自社の強みを審査員にわかりやすく伝えつつ、具体的な取り組み内容を示すことで、説得力が格段に向上します。また、提出前に第三者の視点から客観的に申請書をチェックしてもらうことも、成功の鍵となる要素です。さらに、自身の事業を補助金・助成金の趣旨にどのように関連づけるかを工夫することで、申請内容に説得力が生まれます。

他者との差別化を意識した工夫とは

 補助金申請では、競争を勝ち抜くために他者との差別化が欠かせません。そのため、自社の独自性を明確に伝えることが重要です。例えば、市場での競合優位性を数値データを用いて示したり、自社ならではの技術やサービスを強調することが効果的です。また、採用される可能性を高めるには、事業の新規性や社会的な貢献度をしっかりとアピールすることも大切です。例えば、現在注目されているSDGsや地域貢献活動を取り入れることで、より魅力的な申請書に仕上げることができます。他者との差別化を徹底することで、審査員の興味を引きやすくなり、採択される可能性が高まります。

投稿者プロフィール

武石大介
武石大介
2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。

現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。