1. クラウド会計とは?基本の理解

クラウド会計と従来型ソフトの違い

 クラウド会計は、従来のインストール型会計ソフトと異なり、インターネットを介して利用するタイプの会計ソフトです。従来型のソフトウェアは主にパソコン内部に保存されているため、特定の端末や場所に依存する傾向がありました。一方でクラウド会計は、クラウド・コンピューティング技術を活用することで、インターネットに接続さえできれば、どの端末からでも安全にアクセスすることが可能です。

 また、リアルタイムでのデータ共有ができる点も大きな違いです。クラウド型では最新データに即座にアクセスでき、チームや税理士とのスムーズな情報共有を実現します。これにより、経理業務や意思決定プロセスのスピードが飛躍的に向上します。

クラウド会計が注目される理由

 クラウド会計が注目される背景には、経理業務の効率化とデジタル化が進んでいる現代のニーズがあります。入出金明細の自動取り込みや自動仕訳といった機能により、業務時間を大幅に短縮できます。従来の手動入力作業に比べ、クラウド会計は作業の正確性も向上させ、人為的なミスを減らせるのが魅力です。

 さらに、2022年の電子帳簿保存法改正や2023年に施行されたインボイス制度により、企業の経理業務にもデジタル運用の対応が求められています。この背景から、多くの企業がクラウド会計の導入を検討しており、新しい業務プロセスの標準として普及が進んでいます。

ネットバンキングとの親和性

 クラウド会計が特に注目される理由の一つは、ネットバンキングとの高い親和性です。インターネットバンキングのAPIを通じて銀行口座と連携することで、入出金明細が自動的にクラウド会計ソフトに取り込まれます。この仕組みにより、手動入力の手間とミスが大幅に削減されるだけでなく、経理業務のスピードも向上します。

 たとえば、MFクラウド会計では、国内外の3,600以上の銀行口座やクレジットカードと連携が可能です。この連携の強みは、単なるデータ取り込みに留まらず、AIを活用した自動仕訳によって、効率的に会計処理を進められる点にあります。これにより、業務の属人化を防ぎつつ、リソースの最適化が図れます。

2. ネットバンキングとの連携で経理業務がどう変わる?

ネットバンキング連携の仕組み

 クラウド会計ソフトとネットバンキングを連携させる仕組みは、金融機関が提供するAPIを活用し、銀行口座の明細データを自動で取得することに基づいています。この仕組みにより、わざわざインターネットバンキングのページにログインしてデータを確認、ダウンロードする作業が不要になります。さらに、連携可能な銀行や金融機関の数が増えており、主要な都市銀行だけでなく地方銀行やインターネット銀行まで対応しているため、幅広い業務ニーズに応えられる機能が整っています。

入出金データの自動取り込みとは

 ネットバンキングとの連携が実現すると、銀行口座の入出金データをリアルタイムで自動取り込みできるようになります。たとえば、MFクラウド会計を使用していれば、朝に取引データが更新されるタイミングで、自動的にその日の入出金明細が反映されます。これにより、手動でデータ入力する手間が省け、誤入力や更新漏れといったヒューマンエラーのリスクも軽減できます。特に、日常の経理業務で多発しがちなデータ入力ミスを防ぐ効果が非常に高いため、経理業務における効率化が大きく進みます。

自動仕訳の機能とメリット

 自動仕訳は、クラウド会計ソフトの中でも特に便利な機能のひとつです。入出金データが自動取り込まれるだけでなく、過去の履歴や勘定科目業種の特性を元に、人工知能(AI)が適切な勘定科目や摘要を提案します。たとえば、毎月一定額が支払われる家賃やサブスクリプション費用など、定期的に発生する取引については一度登録すれば同じパターンで仕訳が適用されるため、繰り返し処理の手間も省略できます。

 また、自動仕訳のメリットとして、経理担当者が本来注力すべき経営分析や戦略立案の時間を確保できる点が挙げられます。このように、クラウド会計とネットバンクの自動連携で経理業務がどう変わるかという観点では、業務全体の効率化や精度向上に寄与するだけでなく、データのリアルタイム反映により迅速な経営判断にもつながります。

3. クラウド会計とネットバンキング連携のメリット

業務効率化の実現

 クラウド会計とネットバンキングの自動連携により、経理業務の大幅な効率化が期待できます。従来は手動で行っていた銀行口座の入出金明細の確認や仕訳の記録が、クラウド会計ソフトを使えば自動で処理されます。この連携機能を活用することで、経理担当者は事務作業に割く時間を大幅に短縮でき、より重要な業務に集中することが可能になります。

人為的ミスの削減

 従来の会計処理では、手作業で明細を入力していたため、記載ミスや計算ミスが発生するリスクがありました。しかし、クラウド会計でネットバンキングと連携することで、取引データが自動的に取り込まれるため、これらの人為的ミスを大幅に削減することができます。また、クラウド会計ソフトのAIによる自動仕訳機能は、過去のデータを学習し正確性を高めながら効率化をサポートします。

データのリアルタイム性

 クラウド会計とネットバンキングの連携により、入出金データがリアルタイムで更新されるようになります。このようなデータのタイムリーな反映は、経営者や担当者が常に最新の経営状況を把握するために役立ちます。リアルタイムに収支データを管理できることで、迅速な経営判断や業務戦略の立案が可能になります。また、インターネット環境があれば場所を問わずアクセスが可能な点も、大きなメリットといえるでしょう。

クラウド活用によるコスト削減

 クラウド会計とネットバンキングの連携は、従来の会計ソフトに比べて導入コストを削減できる可能性があります。インストール型ソフトウェアと異なり、クラウド会計はインターネット上のシステムを利用するため、高額な初期費用が不要で、必要な機能だけを選んで利用することができます。また、自動仕訳やデータ取り込みによって経理業務が効率化されることで、人件費や作業コストの削減にもつながります。

4. 導入時のポイントと注意点

事前準備すべきこと

 クラウド会計を導入する前には、いくつか重要な準備が必要です。まず、ネットバンキングの設定を確認し、銀行口座がクラウド会計ソフトと連携可能かどうかを調べることが重要です。多くの会計ソフトは、APIを使用してインターネットバンキングから入出金明細を自動取得する仕組みを採用しており、これを活用するためには連携する金融機関の対応状況を確認しましょう。

 また、経理担当者やチームのスキルセットを見直し、必要に応じてクラウド会計ソフトの使用方法や運用フローを事前に学ぶ準備をしておくことも大事です。成果を最大化するには初期設定やデータの入力精度が鍵となります。

セキュリティリスクの考慮

 クラウド会計の導入ではセキュリティリスクへの対応も重要です。インターネットを介して会計データを取り扱うため、信頼性の高いソフトウェアを選ぶことが基本となります。データの暗号化や二段階認証の仕組みが提供されているか、バックアップ体制が整っているかを確認しましょう。

 また、ネットバンキングとの連携では、銀行口座や帳簿データを扱う中で情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが求められます。初期設定時には、権限管理を徹底し、必要以上のアクセスを制限する仕組みを導入することをおすすめします。

税理士や専門家への相談

 クラウド会計の導入に先立って、税理士や会計の専門家に相談すると多くのトラブルや手戻りを防ぐことができます。特に業務プロセスの見直しや制度改正への対応を事前に検討することが、スムーズな導入に不可欠です。

 税理士は、クラウド・コンピューティングの会計処理に慣れている場合が多く、ソフト選定や運用方法のアドバイスをしてくれます。また、AIを活用した自動仕訳機能の使い方や、インターネットバンキングを活かした業務効率化の最適化についても的確な指導を得られるでしょう。

選ぶべきクラウド会計ソフトの基準

 クラウド会計ソフトを選ぶ際には、業務に適切な機能を重視することが重要です。例えば、ネットバンキングとの連携を重要視するなら、多くの金融機関と対応しているソフトを選ぶことが鍵です。MFクラウド会計は3,600以上の口座やサービスに対応しており、多くの中小企業に利用されている実績があります。

 また、自動仕訳や入出金明細の自動取り込み機能があるか、APIを通じたデータ連携が簡単にできるかなども検討ポイントです。さらに、税理士や経理担当者との情報共有を容易にする機能があるかどうかも重要です。

 導入だけで全ての問題が解決するわけではありませんが、クラウド型ならではのリアルタイム性やコスト削減効果を活かし、適切な会計ソフトを選ぶことで業務の効率化が実現できるでしょう。

5. クラウド会計とネットバンキング連携の実例

自動化成功事例

 クラウド会計とネットバンキングの連携により、経理業務の自動化を実現した成功事例として、ある中小企業のケースが挙げられます。この企業では、複数の銀行口座とクラウド会計ソフトを連携し、入出金明細の自動取り込みと仕訳処理を導入しました。その結果、経理担当者が手動で行っていた入力作業が大幅に削減され、業務時間を50%以上短縮できました。また、APIを利用してリアルタイムでのデータ反映が可能となり、経営陣が最新の財務状況を即座に確認できる環境も整いました。これにより、組織全体としての意思決定速度も向上しました。

トラブル対応例

 一方で、クラウド会計ソフトの導入時にはトラブルが発生することもあります。例えば、ある企業ではネットバンキングの設定に不備があり、一部の口座が正しく連携されない問題が起きました。この場合、銀行側のセキュリティ設定やAPIキーの再登録が必要となり、導入に時間を要しました。しかし、クラウド会計ソフトのサポートチームと銀行のカスタマーサポートを組み合わせて対応したことで、トラブルは無事解消されました。このように、インターネットバンキングと会計ソフトの連携には事前確認が必要であると同時に、トラブル時のサポート体制が整っていることが重要です。

中小企業における導入の効果測定

 中小企業がクラウド会計とネットバンキングを連携させた場合、その効果は具体的な数値で測定することが可能です。例えば、導入前は手動入力に週20時間以上を費やしていた企業が、連携導入後にはこの時間を10時間未満に短縮することができました。さらに、連携ソフトのAIによる自動仕訳提案機能を活用することで、入力ミスがほぼゼロになり、訂正作業も削減されました。また、経理業務を効率化したことで、経理部門が戦略的な財務分析やコスト削減案の策定に時間を使えるようになるなど、副次的なメリットも生まれています。このように、中小企業にとってクラウド会計とネットバンキングの活用は経理業務を効率化し、さらなる成長を目指す一歩となります。

投稿者プロフィール

武石大介
武石大介
2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。

現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。