月次決算を経営に活かす！成長する会社が取り入れる理由とは？

月次決算とは何か、その基本を解説

月次決算の定義と目的

　月次決算とは、企業が毎月の業績や財務状況を把握するために行う決算プロセスのことを指します。その主要な目的は、自社の経営状態をタイムリーに確認し、迅速な経営判断を可能にすることです。これにより、必要な是正措置や戦略の変更を検討する時間を確保できるほか、年度末の年次決算をスムーズに進める準備にもつながります。特に、「小さな会社こそ月次決算を導入すべき理由」として、少ない経営資源を有効に活用し、会社の成長を促進する上で重要とされています。

年次決算との違いとその役割

　月次決算は自社の内部管理を目的とする管理会計の一環であり、年次決算とは異なる役割を持つものです。年次決算が法律に基づき、金融機関や税務署など外部向けに公表するためのものであるのに対し、月次決算は内部向けの自発的な取り組みです。そのため、月次決算では柔軟に資料や内容を変えることができ、短期間で経営状況を把握するツールとして活用されます。月次決算を行うことで、年度全体の利益予測や進捗確認が可能になり、経営者にとって迅速な判断材料を提供するものとなっています。

月次決算が中小企業にも重要な理由

　月次決算は大企業だけでなく、中小企業にとっても非常に重要です。その理由は、経営資源が限られる中小企業こそ、効率的な経営判断が求められるからです。毎月の業績データをもとに経営状態を正確に把握できれば、無駄な支出を削減し、必要な投資に迅速に踏み切ることが可能です。また、金融機関からの融資交渉においても、タイムリーで正確な月次決算を提示することで、企業の信頼度が高まり、資金調達がスムーズに進む場合があります。中小企業においては特に、「数字」に基づいた経営が成長を支える重要な柱となります。

頻度を自由に決められることのメリット

　月次決算は法律で規定された義務ではないため、企業の特性や経営戦略に応じて柔軟な運用が可能です。そのため、業種や規模に応じて頻度や内容を自由に決めることができる点が特徴です。例えば、季節変動が大きい業界では、繁忙期や閑散期ごとに特化した分析を行うこともできます。また、始めは四半期ごとから始めて、慣れてきたら毎月実施する、といった段階的な取り組みも可能です。この柔軟性により、自社に最適化した形で経営状態をモニタリングできるのが月次決算の大きなメリットといえます。

具体的な月次決算の流れ

　月次決算の流れは、大きく以下のステップで進められます。まず、経理担当者による会計データの収集と整理を行います。その後、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの主要な資料を作成します。次に、経営層や各部門がこれらのデータを確認し、現状を分析します。最後に、次月以降の計画や戦略を立て、実行に移すプロセスを繰り返します。効率的な月次決算を実施するためには、会計ソフトやシステムの活用、担当者間の連携、締め処理のルールづけなども重要なポイントです。

月次決算を取り入れるべき理由

経営状態の早期把握で迅速な対応が可能に

　月次決算の最大のメリットは、経営状態を素早く把握できることです。小さな会社の場合でも、売上や費用の動向を毎月確認することで、問題点や改善点を迅速に見つけることが可能です。特に市場環境の変化が激しい現代では、経営状態を把握するスピードが経営の成長を左右します。月次決算を活用することで、業績の悪化兆候を早期に見つけ、対策を講じるための時間を確保できるのです。

業務効率化と経営管理の向上

　月次決算を導入することで、日々の経理業務が飛躍的に効率化します。データを毎月整理し、決算のルーチンを確立することで、年度決算時の負担を軽減するだけでなく、経営管理そのものの質を高めることができます。また、事業全体の資金繰りや業績をタイムリーに把握することで、経営者は自信を持って計画や戦略を立てることが可能になります。

利益予測による計画的な経営の実現

　月次決算を活用することで、利益予測が容易になる点も重要なポイントです。毎月の売上や費用のデータをもとに損益シミュレーションを行い、年度末の利益を計画的に見通すことができます。これにより、成長を続けるための投資や資金調達のタイミングを計画的に決めることができるため、ビジネス全体の安定性が向上します。特に、金融機関からの信用力向上にもつながるため、小さな会社こそ月次決算を導入すべき理由として重視されます。

節税効果と無駄の排除

　月次決算を行うことで、法人税や消費税対策を事前に計画することが可能です。例えば、経費の適切な配分を検討することで、節税の余地を見つけやすくなります。また、月次で経費の詳細を確認することで、無駄な支出を見つけ出し、改善策を講じることができます。こうした取り組みによって、会社全体の収益性を高めるだけでなく、健全な財務体質を維持することが期待されます。

経営判断のスピードアップ

　月次決算を導入することで、経営判断のスピードが劇的に向上します。最新の試算表や損益データを活用することで、経営者は数字をもとに正確な現状分析を行い、迅速に意思決定が可能となります。例えば、新規事業に投資するか、現行事業に集中するか、といった経営判断がタイムリーに行えるのです。適切な判断を素早く下すことは、競争の激しい業界において大きな強みとなります。

月次決算を経営に活用する具体的なポイント

適切なデータ収集と整理の重要性

　月次決算を有効活用するためには、まず正確でタイムリーなデータ収集と整理が重要です。収集すべきデータには、売上や費用、在庫、資金繰り情報など、経営に直結する数値が含まれます。これらを整然とまとめることで、経営状態を正確に把握することが可能になります。特に小さな会社では、限られたリソースの中で効率的に経営を行うためにも、日々の数字を確認し、それを月次決算の資料へと昇華させる能力が求められます。データを整えることで、金融機関への説明もスムーズになり、資金調達の際の信頼向上にもつながります。

会計ソフトやシステムの活用

　月次決算の手間を軽減するためには、会計ソフトやシステムを活用することが効果的です。これにより、手動での計算やデータ整理の負担を大幅に削減できます。現在では多くの会計ソフトがクラウド型となっており、最新のデータを随時確認できるため、経営者や担当者がリアルタイムで経営状態を把握することが可能です。また、これらのソフトは直感的に操作できるものが多く、小さな会社でも導入が容易である点もメリットです。システム活用によって得られる効率化効果は、数字を活用した戦略的経営を後押しします。

チーム間の連携と役職者の関与

　月次決算の有効性を高めるには、経理担当者だけでなく、全社的な協力体制が必要です。各部門が持つデータや情報を適切に経理担当者へ提供することで、正確な決算資料が作成されます。また、役職者が積極的にこのプロセスに関与することで、部門間で一貫性を持った目標や課題の共有が可能になります。小さな会社では特に、経営者自らが月次決算作業に関心を持つことで、現場のモチベーションが高まり、迅速な意思決定が実現します。

試算表を活用した定点観測

　月次試算表を活用することで、経営状態の定点観測が可能となります。例えば、損益計算書や貸借対照表を毎月確認することにより、利益や資産の増減を素早く把握できます。これにより、計画と実績の乖離を早い段階で明確にし、必要に応じた軌道修正を行うことが可能です。月次試算表を継続してチェックすることは、結果のばらつきを抑え、年度決算をスムーズに進めるためにも重要です。特に中小企業では、限られたリソースで効果的な経営判断を行うために、この定点観測の仕組みを取り入れることが肝要です。

結果を経営戦略に反映させる方法

　月次決算で得られるデータは、ただ確認するだけでは意味がありません。それらをもとに、具体的な行動や戦略に結びつけることが重要です。たとえば、利益構造を見直し、不要な費用を削減する、効率の良い部門にリソースを集中するなど、数字に基づいた経営改善を目指します。また、金融機関との交渉や資金調達の場でも、月次決算の結果を根拠に計画的な対応が可能となります。このようなデータの「活用」によって、成長を見据えた経営戦略を立案し実行することができます。

月次決算を成功させるための課題と解決策

導入初期のハードルをどう乗り越えるか

　月次決算を導入する際、多くの企業が直面する課題の一つが「初期のハードル」です。例えば、現状の経理業務を見直したり、新たな業務フローを作成したりする必要があり、時間や労力がかかる点が挙げられます。しかし、こうしたハードルを乗り越えることで「小さな会社こそ月次決算を導入すべき理由」が明確になります。まずは、経営状態を正確に把握する意義を社員に共有し、簡単な業務フローからスタートすることが重要です。さらに、適切な事例を参考にしながら進めることで、経営に活用しやすい仕組みを構築することができます。

担当者不足や業務負担を軽減する方法

　中小企業では経理担当者が一人だけの場合や、兼務している場合が多く、業務負担が増える懸念があります。この課題を解決するためには、外部の会計事務所や専門家に一部の業務を委託し、効率的に月次決算を進める方法が有効です。また、会計ソフトやシステムの導入も、業務の効率化と担当者の負担軽減につながります。さらに、社内での業務分担を見直すことで、手間を分散させることができます。こうした取り組みを通じて、月次決算の正確性を保ちながら企業全体で業務効率を高めることが可能です。

データの精度と正確性を保つポイント

　月次決算が経営判断の基礎となるため、データの精度と正確性を保つことは必須です。例えば、売掛金や買掛金の確認を徹底し、未処理の取引が存在しない状態を維持することが重要です。また、期中の仕訳ミスを防ぐために、定期的なデータチェックを行う体制を整えることも効果的です。このように精度の高いデータが揃えば、経営者はリアルタイムで経営状態を正確に把握でき、効果的な経営戦略を立案することが可能になります。

月次決算のルーチン化と持続性の確保

　月次決算では、日々の経理業務を効率よく進め、業務をルーチン化することが成功のカギです。例えば、毎月の締め処理や帳簿確認のルールを明確にし、社内全体で徹底することで精度の高い月次決算が実現します。また、持続性を確保するためには、担当者に無理のない業務量に調整することや、目標スケジュールを明確にすることが重要です。企業の成長に伴い月次決算が負担になる場合は、早めにシステムや外部支援の活用を検討しましょう。

外部専門家の活用と社内体制の構築

　月次決算を効果的に進めるためには、外部専門家の協力を活用するのも有効な方法です。例えば、税理士や会計士に月次決算の構築や運用を依頼することで、初期の課題をスムーズにクリアできます。さらに、小さな会社では特に、月次決算を習慣化するための社内体制づくりが欠かせません。教育プログラムを設けることで担当者のスキルを引き上げ、全社的な協力体制を築くことで、経営者が数字を活用しやすい環境を整えることができます。このような基盤があることで、経営判断のスピードアップや利益予測の精度向上につながるでしょう。

投稿者プロフィール

武石大介: 2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。

現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。