補助金詐欺の実態と手口

助成金を装った勧誘の手口とは

 近年、助成金や補助金を装った詐欺が増加しています。この手口では、厚生労働省などの公的機関から委託や認可を受けたと偽り、助成金申請の代行サービスを持ちかけてきます。特に無料のセミナーを開催し、高額な契約を結ばせる流れや、実際には不要な「ガイドブック」などの商品契約を強要するケースが報告されています。また、助成金の受給資格がないにもかかわらず、虚偽の書類作成を依頼し不正受給を誘発する悪質な業者も存在します。

怪しい業者が使う典型的なフレーズ

 詐欺業者が頻繁に使用するフレーズには共通点があります。「簡単に申請が通る」「当社の指示に従うだけで補助金がもらえる」など、不自然に甘い条件を提示する発言には注意が必要です。また、「厚労省から特別に許可を得ている」「全国対応可能」「成功率100%」といった誤解を招く曖昧な表現を用い、信用を得ようとします。このようなフレーズが含まれる場合、業者の実態について慎重に確認することが重要です。

高額な着手金と不十分なサポート

 補助金詐欺の典型的な特徴のひとつは、高額な着手金を要求し、その後のサポートが不十分である点です。正規の社労士の場合、着手金は2〜5万円、成功報酬は受給額の10〜20%程度が相場です。しかし、悪質な業者はこの相場を大幅に上回る金額を要求するだけでなく、申請に必要なサポートや指導を行わないことが多いです。また、受給後のトラブル対応がなされないケースも多く、不正受給のリスクにさらされる可能性が高いです。

不正受給により会社の信用が損なわれる実例

 不正受給が発覚した場合、企業にとって当然の法的リスクだけでなく、社会的信用も大きく損なわれます。実際、雇用調整助成金の不正受給では、2022年末時点で135億円以上の被害が明らかになりました。具体的には、架空の雇用や虚偽の休業申請、タイムカードの不正利用などを通じて不正受給していた事例があります。こうした行為が発覚すれば、受給した金額の返還や事業主名の公表、さらに最大5年間の補助金利用停止措置が課される可能性があります。不正受給は一時的な利益をもたらすかもしれませんが、企業の将来的な存続に深刻な影響を与えるため、最も注意が必要です。

悪質業者を見極めるためのポイント

業者の資格確認と信頼性のチェック

 補助金申請代行業者を選ぶ際は、業者の資格や信頼性を必ず確認するようにしましょう。注意したい点として、補助金や助成金の申請を代行するために特別な資格は不要であるため、誰でも業者を名乗れる現状があります。そのため、国家資格を持つ社会保険労務士など、確かな実績や知識を備えた専門家に依頼することが重要です。また、厚生労働省や自治体から公式に認可を受けているかも確認し、怪しい業者に騙されないようにしてください。

正式な補助金情報の収集方法

 補助金詐欺に巻き込まれないためには、正式な補助金情報を自分で収集することが基本です。政府機関や自治体の公式ウェブサイトを定期的にチェックし、正確な情報を得るよう心がけましょう。また、専門家に相談する際も自身で基礎知識を持っておくことで、怪しい業者や不正な内容に気づきやすくなります。無料セミナーの勧誘や情報の押し売りをする業者には要注意です。

料金の相場や透明性を確認する重要性

 補助金申請の代行を依頼する場合、高額な料金を請求されることがあります。その際、料金の相場や・透明性の有無をしっかり確認しましょう。例えば、社会保険労務士による着手金の相場は2~5万円程度、成功報酬は10~20%程度です。これを大きく上回る金額を提示された場合は、不審な業者である可能性が高いです。契約に際して詳細な見積書を提出してくれる業者を選び、不正受給によるトラブルを回避しましょう。

申請要件についての業者の説明を評価

 信頼できる業者は、補助金の申請要件について詳細かつ正確に説明してくれるものです。不正受給につながるような虚偽申告や、架空の資格や条件を整えることを提案する業者は避けるべきです。助成金や補助金申請に関する説明が曖昧な場合や、具体的なルールを示さない場合、その業者を信頼するのは危険です。また、申請要件について理解できない点があれば必ず確認し、適切な対応を取ってください。

不正受給に巻き込まれないための対策

信頼できる専門家に相談する方法

 補助金詐欺に巻き込まれないためには、信頼できる専門家へ相談することが最も重要です。特に、社会保険労務士など国家資格を持つ専門家に依頼することで、不正受給につながるようなリスクを大幅に軽減できます。不審な業者は資格を持たずに申請代行を名乗る場合もあるため、資格証明の提示を必ず求めるようにしましょう。また、相談先を選ぶ際には、過去の実績や口コミ、正式な契約内容をしっかり確認し、不明点について質問することが不可欠です。

補助金申請の流れをしっかり理解する

 補助金の申請には多くのステップがあり、それを正しく理解することが詐欺に遭わないための第一歩です。例えば、補助金の公式情報は厚生労働省や自治体の公式サイトから取得できます。また、見落としがちなのが提出書類の内容や申請期限の重要性です。不正受給は、虚偽の書類提出や条件不適合な状態での申請から発覚することが多いため、業者任せにせず、自らも申請の流れを把握する努力を怠らないことがポイントです。

不審な連絡への具体的な対処方法

 見知らぬ業者からの突然の勧誘や、「お得な補助金申請手続きを代行します」といった連絡には慎重になる必要があります。このような場合は、まず業者の身元を確認し、公式機関の委託先であるかを調べましょう。また、「今すぐ申し込まないと損をする」や「手続きが非常に簡単」といった甘い言葉には注意が必要です。明らかに怪しい場合、連絡自体を無視するのが得策です。場合によっては、消費者庁や自治体の相談窓口に相談することも検討してください。

企業全体でのリスク管理の重要性

 補助金詐欺防止のためには、企業単位でのリスク管理も欠かせません。例えば、申請に関する責任者を明確にし、内部での透明なプロセスを維持することが大切です。また、従業員全体に対して補助金詐欺や不正受給に関する教育を行うことで、怪しい業者の手口に気付ける知識を共有することも重要です。万が一、業者や従業員の間で不審な動きがあった場合、迅速にリスクを共有し対応を進める体制を整えておく必要があります。

万が一詐欺に遭った場合の対応策

法的手段を講じる前にすべきこと

 補助金詐欺の被害に遭った際、焦って法的手段に移る前に冷静に状況を整理することが重要です。まずは、業者とのやり取りの記録や契約書、支払い明細など、詐欺を裏付ける証拠を全て集めましょう。これらの記録は、後々、法的手段や相談機関で必要となる重要な資料です。また、自身が補助金の「不正受給」をしていないかどうかも確認する必要があります。万が一、業者の指示で不正が行われていた場合には、早急に専門家や関連機関に相談して対策を考えましょう。

消費者庁や自治体への相談窓口を活用

 補助金詐欺に遭った場合、まず信頼できる相談窓口に連絡するのが効果的です。消費者庁や各自治体は詐欺被害に関する相談窓口を設けており、初期対応のアドバイスや次のステップについての案内を行っています。また、補助金や助成金に関する詐欺の場合、厚生労働省や各省庁の専用窓口に相談するのも一つの手です。これにより、不正受給や詐欺とみなされる可能性を回避しつつ、適切なサポートが得られるでしょう。

被害を最小限に抑えるための迅速な報告

 詐欺被害に気づいたら、すぐに関連機関や相談窓口に報告することが肝心です。特に、不正受給が疑われる場合には速やかに報告し、助成金返還などの対応を始める必要があります。時間が経つほど、被害やトラブルが拡大する可能性があるため、早めの対応が重要です。また、警察や専門家への相談も行い、法的措置を視野に入れた対策を練ることが被害軽減につながります。

再び被害に遭わないための事後対策

 詐欺被害に遭った後、同じ失敗を繰り返さないための防止策を講じることが大切です。まず、業者選びにおいては、国家資格を持つ社会保険労務士など、信頼性の高い専門家を利用することが基本です。また、補助金や助成金の申請手続きについて、自らの理解も深めることで、怪しい業者の勧誘や不正な申請のリスクを減らすことができます。さらに、企業全体がリスク管理を徹底し、不審な勧誘や連絡に対処できる体制を整えることも有効な対策です。

投稿者プロフィール

武石大介
武石大介
2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。

現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。