発起人とは?基本の意味と重要性

発起人の定義と法的な意味

 発起人とは、株式会社の設立において中心的な役割を担う人物のことです。法律上の定義では、「発起人」とは会社設立計画を立案し、定款の作成・認証、資本金の出資、登記申請といった手続きを行う人を指します。発起人がいなければ会社設立を進めることはできません。そのため、発起人は設立プロセスの根幹を支える極めて重要な存在です。

発起人が担う役割とは?

 発起人の役割は多岐にわたります。主に会社設立に必要な以下の手続きと業務を遂行します:

  • 会社設立企画の立案: 会社の目的や基本事項を明確にします。
  • 定款の作成と認証: 定款は会社設立において必要な基本的なルールを定めるもので、公証役場での認証が求められます。
  • 資本金の出資: 発起人は会社設立時の資本金を出資し、それを管理します。
  • 設立手続きの遂行: 各種書類の準備や申請を行い、会社が法律上認められる手続きを進めます。

 さらに、会社が無事設立された後は、発起人が株主としての責任を担うことになります。

発起人と株主の違い

 発起人と株主は混同されがちですが、その役割には明確な違いがあります。発起人は、会社を設立するために必要な手続きを進める「創業者的な役割」を持つのに対し、株主は会社設立後に株式を保有して「所有者」としての地位を持つ人物です。もちろん、発起人が株主としての立場を兼ねることも一般的ですが、会社設立の段階と設立後の役割において両者は異なる視点を求められる存在です。

発起人になるための条件

 発起人になるには、会社法で定められたいくつかの条件を満たす必要があります。15歳以上で、会社設立時に資本金を出資できる人物であれば、発起人として認められます。また、法人も発起人になることが可能です。ただし、破産者や刑罰を受け執行猶予中の人が発起人になる場合、取締役として任命を受けられないケースもあるため慎重な判断が必要です。

 さらに、発起人となる人数については「1名以上」であれば問題ありません。ただし、安易に人数を増やすと意見の対立が起きる可能性があり、設立手続きに時間がかかるリスクがあるため注意が必要です。発起人の選定は、設立プロセスを円滑に進めるためにも重要な検討事項となります。

会社設立における発起人の具体的役割

会社設立企画と基本事項の決定

 発起人は、会社設立を成功させるための企画立案と基本事項の決定を担います。具体的には、会社の名称や所在地、事業内容、資本金の額、組織体制などを決めることが挙げられます。この段階での判断が会社の方向性を大きく左右するため、法律や市場動向を考慮しながら慎重に計画を立てる必要があります。発起人は、会社の基盤を築く立場として非常に重要な役割を果たします。

定款の作成と認証の責任

 定款は株式会社の基本ルールを定めたものです。発起人はこの定款を作成し、内容が法律に違反していないか確認する必要があります。例えば、会社の目的や商号、発行可能株式数などが正しく記載されていることが求められます。作成後は公証役場で認証を受け、法的効力を持たせる作業が必要です。この手続きは会社設立に欠かせないステップであり、発起人の重要な責任のひとつと言えます。

資本金の出資方法と管理

 会社設立には資本金の出資が必要です。発起人はその資本金をどのように出資し、管理するかを決定します。通常、発起人自身が資本金を拠出し、出資割合を明確にします。また、資本金の払い込みが適切に行われたことを証明するために、金融機関からの払込証明書を取得することも求められます。資本金の管理は会社の信頼性にも直結するため、慎重に運用されなければなりません。

設立後の株主としての役割

 会社が設立されると、発起人はそのまま株主となります。株主としては、会社の経営に対する重要な意思決定を行うことが求められる場面があります。一方で、日常的な経営には直接関与しないケースも多く見られます。発起人が設立時に出資割合を十分に考慮していれば、設立後も自らの意見を反映させやすい状況を作ることが可能です。また、発起人は会社設立の段階でかけた労力が新たなビジネスの基盤として発展することを見届ける立場にあります。

発起人の手続きステップと注意点

定款作成と公証役場での手続き

  会社設立の第一歩として、発起人が行うべき重要な作業が「定款の作成」です。定款とは、会社運営の基本事項を定めた文書であり、設立する株式会社の名前や事業内容、本店所在地、発起人の名前や出資額などが記載されます。定款の内容を明確にしておくことは、設立後のトラブルを防ぐうえでも非常に重要です。

  定款は発起人全員が署名または記名押印する必要があり、その後、公証役場で認証を受けます。この認証手続きにより定款が法的効力を持つようになります。公証役場では公証人による定款内容の確認が行われ、不備があれば修正を求められることもありますので事前にしっかりと内容を確認しておきましょう。また、この手続きには手数料が発生しますので、必要な費用を準備しておく必要があります。

資本金払い込みの流れ

  定款の認証が完了した後、発起人は会社設立に必要な資本金を払い込みます。これは、発起人が事前に用意した銀行口座に、各発起人が出資額を振り込む形で進められます。資本金の払い込みを証明するため、金融機関が発行する「払込証明書」を取得することが必要です。この証明書は、登記の際に必要な書類となるため、紛失しないよう注意してください。

  資本金は会社の経営基盤となる大切なお金ですので、発起人同士で出資額や分担内容について充分に話し合い、誤解や不満が残らないようにしておくことが重要です。また、資本金の額によって登録免許税や手続き費用が変わる場合もありますので、この点にも注意しましょう。

登記申請に必要な書類と準備

  株式会社を設立するためには定款が認証され、資本金が払い込まれた後に、登記申請を行う必要があります。この際、いくつかの書類が必要です。具体的には、認証済みの定款、発起人の印鑑証明書、払込証明書、取締役や監査役の就任承諾書、登記事項証明書などが含まれます。これらの書類が揃っていないと申請が受理されませんので、事前に漏れがないようしっかりと確認しましょう。

  さらに、法務局での登記手続きの際には、定款内容や提出書類が会社法の規定に準拠しているかが厳密に審査されます。そのため、不備があれば補正が求められ、設立に時間がかかる可能性もあります。必要書類を揃えたうえで、速やかに登記申請を行いましょう。

登録免許税やその他費用の確認

  株式会社の設立においては、さまざまな費用が発生します。その中でも特に大きな項目となるのが「登録免許税」です。この税額は、資本金の額に応じて変動しますが、最低でも15万円が必要です。資本金を多く設定する場合は登録免許税が増加する可能性がありますので、計算の際には注意が必要です。また、電子定款を利用するかどうかによっても費用が異なる点に留意してください。

  その他、公証役場での定款認証にかかる手数料や、必要書類の作成費、専門家に依頼する場合の報酬などが発生する可能性もあります。このような経費を含め、十分に資金を準備したうえで設立手続きに臨むことが成功の秘訣です。細かい費用項目を漏れなく確認し、後からの予期せぬ出費を防ぎましょう。

発起人に関するよくある疑問と解説

発起設立と募集設立の違い

 株式会社を設立する際には、大きく分けて「発起設立」と「募集設立」の二つの方法があります。発起設立とは、発起人がすべての株式を引き受ける方式を指します。この方法では、発起人が主体的に会社設立を進めるため、設立手続きがスムーズに進む場合が多いのが特徴です。

 一方で、募集設立は発起人が発行する株式の一部を引き受け、残りを第三者に募集する方法です。この方式では、多くの出資者を巻き込むことができるメリットがある一方で、手続きが複雑になりやすく、第三者からの出資を確保するために多くの工数が求められる点が注意点です。

 どちらの方式を選択するかは、設立時の資本金の調達方法や発起人の意向によって異なります。会社設立においては、それぞれの方法の特性を理解した上で選択することが重要です。

複数の発起人がいる場合の注意点

 発起人が複数人いる場合、全員が一致した決定を下すことが求められます。しかし、発起人の人数が多すぎると意見が割れやすくなり、会社設立の進行に支障をきたす可能性があります。そのため、発起人の人数は必要最小限に抑えるのが一般的です。

 また、発起人全員が必要な手続きに同意し、定款へ署名する必要があります。誰か一人でも同意しない場合や手続きに不備があった場合、設立手続きが遅れるリスクがある点に留意してください。特に、法律上発起人全員がそれぞれの責任を負うため、コミュニケーション不足や進行管理の不備を防ぐことが大切です。

発起人の辞退や変更は可能か?

 設立手続きの途中で発起人が辞退を希望する場合でも、法律上は変更が認められる場合があります。ただし、定款に発起人の名前が記載されているため、修正手続きが必要になります。また、発起人が辞退した場合、その代わりとなる出資者を確保するなどの調整も必要となり、手続きが複雑化する可能性があります。

 発起人の変更や辞退は特別な事情がない限り避けるべきです。そのため、会社設立における責任や役割を十分に理解した上で発起人を選定することが重要となります。

責任やリスクについての詳細

 発起人は、会社設立において中心的な役割を担いますが、その責任も重大です。具体的には、発起人は設立手続きの過程で発生した債務について連帯して責任を負う可能性があります。特に、会社設立後に株式を引き渡すための株主募集などで問題が起きた場合、法律上の責任を追及されることもある点に注意が必要です。

 また、設立が完了するまでの期間、発起人自身が会社に資本金を提供し、その管理を行います。そのため、資金調達や書類の不備といった問題が発生すると、発起人自身の資産がリスクにさらされる可能性もあります。

 以上のリスクを軽減するためには、法律や必要な手続きについて十分に理解し、綿密な計画と実行が求められます。また、会社設立の初期段階で専門家のアドバイスを受け、リスク回避の対策を講じることが望ましいでしょう。

投稿者プロフィール

武石大介
武石大介
2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。

現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。