紙定款と電子定款とは?基本を理解しよう
紙定款の概要と特徴
紙定款とは、会社の基本情報や規則を記載した書類を紙に印刷し、公証役場で認証を受ける形式の定款です。いわば「会社のルールブック」とも呼ばれるもので、会社を設立する際になくてはならない重要な書類です。紙定款は作成や管理が比較的シンプルであることが特徴ですが、公証役場での認証時に収入印紙代4万円が必要となる点には注意が必要です。特別な機器やソフトの準備は不要なため、初めて会社設立を行う方にもなじみやすい方法と言えます。
電子定款の概要と特徴
電子定款とは、紙の代わりに電子ファイル形式(PDFなど)で作成される定款のことです。この形式では、定款を紙に印刷することなくPC上で作成し、電子署名を施した上で公証役場で認証を受けます。電子定款の最大の特徴は、紙定款と異なり収入印紙代4万円が不要な点です。そのため、コスト削減を重視したい会社設立者に人気があります。ただし、作成には電子証明書付きのマイナンバーカードやICカードリーダライタ、電子署名ソフトなど、特定の機材やソフトが必要です。また、設定や運用に一定の知識が求められることから、専門家のサポートを活用するケースもあります。
紙と電子、それぞれの法律的な扱い
紙定款と電子定款の法律的な効力に違いはありません。いずれも会社設立時に公証役場での認証が必要となり、認証を受けた定款が正式な会社のルールブックとして法的に認められます。ただし、電子定款については2004年3月に電子認証制度が導入されたことにより、法律で認められるようになりました。この制度により、紙ではなくデジタル化した定款でも同様の認証と法的効力を得られるようになっています。紙定款は古くから利用されている伝統的な形式ですが、電子定款はペーパーレス化やコスト削減を目的に近年注目を集める形式です。会社設立の流れや必要な認証手続きにおいても、この2つの形式に大きな違いはありませんが、電子定款では特別な作成手順が必要になる点が特徴です。
紙定款と電子定款の主要な違い
費用面での比較:印紙税の有無
紙定款と電子定款の大きな違いの一つは、費用面にあります。紙定款の場合、会社設立時に公証役場での認証を受ける際、収入印紙が必要です。この印紙税は4万円と高額で、費用負担が重い点がデメリットと言えます。一方で、電子定款の場合は収入印紙が不要です。これにより、場合によっては紙定款よりもコスト削減が可能になる点が電子定款のメリットといえるでしょう。ただし、電子定款の作成には専用の機器やソフトの購入費用がかかるため、短期的な費用負担を考慮する必要があります。
作成手間や手続きの違い
紙定款は、紙に印刷し署名・押印を行う、比較的シンプルな手続きで完成します。一方で電子定款の作成には、電子証明書付きのマイナンバーカードやICカードリーダライタ、電子署名ソフトなどの専用機器を準備する必要があります。さらに、電子定款には電子署名の付与が必須であり、慣れていない場合は操作方法に手間取ることもあります。ただし、電子定款はオンラインでの手続きが可能なため、一度運用に慣れれば効率的に作業を進められる点が特徴です。
保存性・管理性についての違い
紙定款は紙媒体であるため物理的な保存が必要で、劣化や紛失のリスクがあります。また、管理のために専用の保管場所を用意しなければならず、長期的な運用で手間がかかる場合があります。一方で電子定款はPDF形式で保存できるため、デジタルデータとして管理が可能で、場所を取らない点がメリットです。ただし、電子データの破損や消失への備えとして、バックアップの適切な運用が求められます。
認証手続きに必要な条件の違い
紙定款と電子定款では、公証役場での認証手続きにも違いがあります。紙定款の場合、原本の紙媒体を持参し、公証人による認証を受けなければなりません。一方、電子定款の場合、PDF形式のデータに電子署名を付与して送信するだけで完了するため、物理的な持参は不要です。これにより、遠隔地からでもスムーズに認証を受けることが可能となります。ただし、電子定款を使用するためには専用のシステムや機器の操作に習熟している必要があります。
電子定款を選ぶメリットとデメリット
コスト削減の観点から見たメリット
電子定款は紙定款に比べて、大幅なコスト削減が可能なのがメリットです。最大の特徴は、収入印紙代4万円が不要になる点です。紙定款の場合、認証時に必ずこの印紙税が必要ですが、電子定款ではこれが免除されます。会社設立を考えている方にとって、初期費用を抑える大きな利点となります。また、行政書士や税理士に電子定款作成を依頼した場合でも、印紙税の不要分を差し引けばコスト的にメリットが残る場合があります。そのため、電子定款の利用はコスト削減を重視する方に非常に適しています。
操作や導入環境の難しさとその対策
一方で、電子定款には操作や導入環境のハードルがあることがデメリットといえます。電子定款を作成するためには、ICカードリーダライタや電子署名ソフトなど専用の機器やソフトが必要です。また、電子署名を付与するためにマイナンバーカードや電子証明書も準備しなければなりません。これらを揃える手間や費用がデメリットと感じる方もいるでしょう。ただし、これらのデメリットを解消する方法として、電子定款作成を専門の税理士や行政書士に依頼する選択肢もあります。専門家に依頼すると、面倒な準備や作業を任せられるため、スムーズに進めることが可能です。
ペーパーレス化による省資源の効果
電子定款の大きなメリットの一つとして、ペーパーレス化による環境への配慮が挙げられます。紙を使用しないため、資源の消費を抑えることができ、エコロジーな会社経営のスタートポイントにもなります。また、デジタルデータとして保存が可能であり、紙定款のように劣化や紛失のリスクがありません。これにより、長期的な保存や管理も容易になります。企業においてはペーパーレスの推進がトレンドとなっており、環境への配慮を意識する企業姿勢の一端として、電子定款を選ぶことが効果的な選択肢となる場合があります。
紙定款を選ぶ場合のメリットとデメリット
初期コストや手作業での簡便性
紙定款の最大のメリットは、初期コストが低く、手作業で簡単に作成できる点です。電子定款を作成する場合、電子署名ソフトやICカードリーダライタなどの専用機器を揃える必要がありますが、紙定款ではこうした機器は不要です。そのため、特に会社設立時の予算が限られている場合や複雑な電子手続きを避けたい場合に適しています。さらに、パソコン操作に慣れていない方にとっても、紙に直接記載する形式は安心感があるため、ハードルが低いと言えるでしょう。
電子機器不要な手続きの安心感
紙定款では電子機器を使う必要がないため、シンプルな手続きで完了できるという安心感があります。電子定款では、ICカードリーダライタの準備や電子署名付与の手順が必要ですが、これらに不安がある方にとって紙定款はメリットが大きいです。また、紙定款は文書として手元に残るため、電子データの消失や破損を気にする必要がなく、安全性を重視する方に向いています。
将来的に感じる運用面での課題
ただし、紙定款には将来的に感じる運用面での課題もあります。例えば、紙媒体の保管や管理に手間がかかる点が挙げられます。長期的には劣化や紛失のリスクもあり、電子定款のようにデジタルデータとして安全に保存できるメリットがない点がデメリットとなり得ます。また、収入印紙代4万円が必要なため、設立費用の面でも電子定款に比べて割高になります。このような点を考慮すると、将来的な効率性やコスト面では電子定款に劣る部分があると言えます。
紙定款、電子定款はどう選ぶべきか?具体的な判断基準
会社設立時の予算と必要な備品を考慮
紙定款と電子定款を選ぶ際には、まず会社設立時の予算とその中で必要となる備品や費用を明確に把握することが重要です。例えば、紙定款の場合は印紙税として4万円が必要ですが、電子定款を採用すればこの費用をカットすることが可能です。一方で、電子定款を作成するためにはICカードリーダライタや電子署名ソフトなどの専用機器やソフトの購入費用が発生します。
予算が限られている場合や初期費用を抑えたい場合には、電子定款の活用を検討すると良いでしょう。ただし、長期的な視点でこれらの機器を別の用途でも活用できる場合や専門家のサポートを受けたい場合はコストパフォーマンスの観点で電子定款が有利です。
事業規模や将来の運用効率から判断
次に、選択の基準として事業規模や今後の運用効率を考えることもポイントです。紙定款は作成や手続きが比較的シンプルで、初めて会社を設立する場合にも安心感があります。しかし、事業規模が拡大する可能性が高い場合や、事業全体でペーパーレス化や効率化を図りたい場合は電子定款が適しているといえます。
電子定款を利用することで、デジタルデータとして簡単にコピーや保存、参照ができ、管理面における利便性が向上します。特に複数の関係者と同時に共有する必要がある場合は、電子定款が作業の効率化に大きく貢献します。
サポートサービスの活用も視野に入れる
紙定款と電子定款のいずれを選ぶにしても、専門家のサポートサービスの利用を検討するのも一つの方法です。電子定款の作成では特に機器やソフトの設定、電子署名の付与、認証手続きなどに初めてでは難しく感じる場合があります。そのような場合、税理士や行政書士といった専門家に依頼することで、手間や時間を削減できるだけでなく、正確でスムーズな作成が可能になります。
また、電子定款が向いているか、あるいは紙定款にするべきか迷っている場合も、これらの専門家に相談することで、自社に最適な選択をアドバイスしてもらえます。これにより、会社設立時の不安を大幅に軽減することができるでしょう。
投稿者プロフィール

- 2017年に公認会計士試験に合格し、監査法人で複数年にわたって監査経験を積んできました。また公認会計士試験の合格前後に2社設立と3つの新規事業を行った経験があります。1社事業は売却、1社はクローズしました。
現在は独立し、会計士としての専門知識と自身の起業・事業経験を活かし、会計・財務支援をはじめ、起業・経営に関するアドバイスも行っております。
具体的には、資金調達・補助金申請サポート、財務分析、事業計画の作成支援、記帳代行など、実務的かつ実践的な支援が可能です。
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